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木村嘉子展に行ってきた

先日、以前から気になっていた、さかい利晶の杜で開催されている企画展「木村嘉子展-色彩表現の探求~生きることは変化すること~」を見に行ってきた。

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色フェチの私は副題の「色彩表現の探求」という言葉に単純に惹かれて訪れたのだが、思いがけず多くのものを持ち帰ってくることになった。

この企画展は木村嘉子の絵画展であると同時に、「抽象画とは何たるか」の企画展だったのだ。

 

木村嘉子は抽象画家である。

絵画展には、初心者向けに抽象画とは?の説明書きが添えられていた。

「生きることは変化すること」彼女の言葉道理、彼女の作品は年代により大きく作風が変化している。それは彼女が常に「現代的」であることを追い求め、新しい画法にチャレンジしていたためであるが、それにより、彼女の軌跡をたどる絵画展は、まるで抽象画の表現技法の歴史をたどっているかのようだった。

今回の絵画展で私が一番気に入ったのは「丸の作品」という絵画である。キャンバスの油彩。直径はかるく1メートルは超えていたと思う。この作品は絵画展のメインに据えられているのであろう。チラシやポスターのモチーフとしても使われているが、生で見ると迫力が違う。私はいままで抽象画を好んでいなかった。私には理解できない。ハードルの高いもののように思えていた。しかし、この絵画を見る事で抽象画の楽しみ方が少しわかった気がする。まず初めに単純に絵画として美しかった。そして色彩表現の美しさに惚れ込んだ。次に絵に残された筆跡などからどの様にしてこの作品が描かれたのかを推測して楽しんだ。また、作者がこの絵で表現しているものはなんであるかを考えた。その空想は沼のようにどこまでも深く油断すると時間は飛ぶように過ぎていく。見る角度によっても立ち位置によっても見え方が変わって面白い。その日は平日で閑散としていたおかげで30分近くはその絵の前でじっと眺めていたと思う。「ご迷惑になるといけないのでそろそろ行こう」と何度も思ったのだが、離れがたかった。もしこの絵が家にあればコーヒーを片手に1日中でも座り込んで眺めていられると思ったほどだ。

 

抽象画とは見る側に自由をあたえる絵画である。その解釈の仕方も、楽しみ方も、楽しむかどうかさえも自由なのだ。そう考えると、抽象画へのハードルも少しは下がるのではないか。私のような入門者にもそれが感得できる企画展だった。